消化器系の病気

消化器系の病気

猫の口内炎

人と違って猫の口内炎は重症になるものも珍しくなく、難治性の慢性歯肉口内炎になり、口の中が赤くただれ、潰瘍ができたり出血したりすることもあります。そうなると痛みによって水やごはんを食べることができなくなり、重症になると、痩せて衰弱し、脱水症状になってしまいます。場合によっては唾液も飲み込めなくなったり、呼吸するのも困難になってしまったりします。原因は口腔内の細菌で、猫ウイルス性鼻気管炎や猫カリシウイルス感染症によって身体の免疫力が低くなり、歯肉口内炎が治りにくくなることもあります。さらに、腎不全で尿毒症になると、唾液中のアンモニア濃度が高くなって、口の中がよりただれてしまいます。 治療方法としては、抗生剤の投与や消毒液による口腔内洗浄などがあり、場合によっては抜歯をすることで細菌が増殖できなくすることもあります。

歯根膿瘍(しこんのうよう)

歯周病によって歯の周りに炎症が発生し、歯の根元に膿ができるのが歯根膿瘍です。激しい痛みが出るため、固いものは噛めなくなり、食欲が低下します。また、口臭が酷くなり、唾液も多量に分泌されます。場合によっては、発熱して、鼻から血や膿が出てくることもあります。犬歯と上顎の前臼歯で発症しやすく、場所によっては皮膚表面を突き破って破裂してしまいます。治療方法としては、抜歯、歯の表面の歯石除去、抗生物質の投与などがありますが、普段から予防として、歯磨きと歯石除去をしておくことが重要です。

口蓋裂(こうがいれつ)

口蓋裂は、上顎に裂け目がある先天性の形態異常です。大きな口蓋裂があると、赤ちゃんの時にミルクを吸い込んで吸引性肺炎を起こして死んでしまうことがあります。また、小さな口蓋裂があると、鼻からミルクの泡を出すなど、絶えず鼻から分泌物が出てきます。進行すると気管支炎や誤嚥性肺炎などになることもあります。若い時に治療をした方が治りは良く、生後3ヶ月頃に胸部X線検査で肺疾患が認められなければ、外科手術を行います。

唾液腺嚢腫(だえきせんのうしゅ)

唾液腺とは唾液を分泌する器官で、唾液腺嚢腫は唾液腺や唾液管に異常が起きて、唾液が他の組織にまで漏れてしまう病気です。咽頭部に唾液が溜まると、吐気や呼吸困難を引き起こしてしまうことがあり、唾液が溜まったところから唾液を取り除く処置をしますが、場合によっては唾液腺を摘出することもあります。

巨大食道症

食道が拡張することで機能が低下し、食べ物を胃に送り込めなくなる病気です。症状としては、嘔吐がよく見られ、食べてもすぐに吐いてしまうため、痩せて衰弱することもあります。場合によっては吐いた食物が気管から鼻や肺に入って鼻炎や肺炎になることもあり、発熱、咳、呼吸困難によって死んでしまうこともあります。原因としては、先天性、他の病気や事故などが考えられます。他の病気からの後天性二次性巨大食道症は、基礎疾患にもよりますが適切な治療をすることで食道の運動性が回復することもあります。

胃腸内異物

小さなおもちゃ、紐、ボール、串、植物の種などを飲み込んでしまうことが多く、胃の中にそれらが留まることもあれば、腸へと流れてしまうこともあります。症状としては嘔吐や激しい腹痛があります。また、異物が腸に流れた場合は、腸閉塞になって吐き気が頻発し、腸の一部が血行不良で壊死して穴が開いてしまうこともあります。治療方法は、外科手術による胃や腸からの異物摘出です。レントゲンでは分からない異物もあるため、内視鏡検査やバリウム検査が必要となることもあります。

胃拡張・胃捻転(いかくちょう・いねんてん)

胃拡張・胃捻転は主に犬の急性疾患で、胃の中にガスが大量発生してパンパンになった胃袋が捻転を起こす病気です。吐き気、元気がなくなるといった症状があり、すぐに処置をしないとシ他の臓器や血管が圧迫を受けて、血流が悪くなり、そのまま死亡してしまうこともあります。特にシェパード、ボルゾイ、グレート・デーン、ボクサー、ジャーマン・シェパード、セント・バーナード、ドーベルマンなどの大型犬で多く発症します。一度に大量の食事や水を与えない、食後の急激な運動を避けるなどの予防策を講じるようにしましょう。

膵炎

膵臓は消化酵素を分泌しており、それが膵臓内で活性化して炎症を起こすのが膵炎です。この酵素は血管を通って他の臓器に届き、炎症を起こしてしまう「多臓器不全」を引き起こすこともあります。

犬の膵炎

犬の膵炎は、膵臓内の消化酵素前駆体が活性化されることによる膵臓の自己消化と炎症反応です。食欲不振や嘔吐、お腹を痛がるといった症状が見られるようになります。激しい腹痛を伴う急性膵炎が突然発症することもあり、入院治療が必要になることもあります。膵炎は、病状の進むと劇症型の出血性膵炎となり、嘔吐、出血性の下痢、呼吸困難、ショックなどが発生し、死亡してしまうことも珍しくありません。多量の高脂肪食を好む犬や、肥満の犬も罹患率が高くなっています。

猫の膵炎

猫の膵炎は、特異的な症状が多いのですが、膵炎、肝・胆管炎、腸炎、糖尿病などを併発することがあります。嘔吐しないこともありますが、元気がなくなったり、食欲が減退したりする症状が見られることがあり、原因としては、胆管系の疾患、中毒、虚血、外傷、薬物反応、感染症などが考えられます。栄養バランスの取れた食事を与えて、脂肪分の多い食事やおやつを控えるようにしましょう。

膵外分泌不全(すいがいぶんぴつふぜん)

膵臓は、消化液や、血糖値をコントロールするインスリンを分泌する重要な臓器です。その膵臓の消化液を出す組織に傷害が発生して、消化液が出せなくなってしまうのが膵外分泌不全です。原因は膵臓の萎縮、慢性肝炎などで、症状としては食べても食べても太らない、便が白っぽい、便が腐った油のような臭いがするなどがあります。膵臓の機能は回復しにくいため、一度かかったら生涯に渡って治療を続けていくことが必要になります。不足した消化酵素を補うための膵酵素の補給をすることで症状が改善されることもあります。大型犬がなりやすく、特に若いジャーマン・シェパードは発症することが多い傾向にあります。

胆泥症・胆石症

胆嚢の中に胆汁の成分が変質して溜まったのが胆泥症、それが結晶化してしまったのが胆石症です。胆嚢は脂肪分を消化する胆汁を蓄えており、食事をすると、刺激を受けて収縮し、胆汁が十二指腸に送られます。胆泥症や胆石症は初期段階ではほぼ無症状ですが、総胆管を塞いでしまうと元気がなくなったり、食欲が低下したり、嘔吐したり、黄疸が出てきたり、便の色が白っぽくなったりします。原因は、細菌感染、腸炎・膵炎・肝炎からの併発が考えられます。また、副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症によって引き起こされることもあるので、まずはそういった基礎疾患を治すことが重要です。胆泥症・胆石症に対しては、抗生物質や胆汁の分泌を促進する薬を投与しますが、悪化している場合は外科的な処置が必要になります。

炎症性腸疾患(えんしょうせいちょうしっかん)

炎症性腸疾患には、リンパ球ブラズマ細胞性結腸炎、好酸球性胃腸炎、肉芽腫性腸炎、組織球性潰瘍性腸炎などがあり、原因はよく分かっていません。ただし、腸内細菌、食物への免疫反応、腸管免疫調節の異常、腸のバリア機能低下などが関与していると考えられています。症状としては、嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少などが見られ、重症になると蛋白漏出性腸症を引き起こすこともあります。長期的な投薬、食物アレルギーの原因となる可能性が極めて低い加水分解蛋白質や高消化性の精製された炭水化物によって治療を進めていきます。

猫の便秘

便をした直後に走り回ったり鳴いたりする時は、便秘で痛がっている可能性があります。また、便秘になると、食事の量は減っていないが便の量が少なくなる、食欲がなくなる、吐く、何度もトイレに行く、なかなかトイレから出てこないといったことも便秘の症状として見られます。治療方法は、まずは自然と出てくるように腸をもみほぐしますが、それでも難しい場合は、直腸から直接糞を摘出します。また、お腹周りに何か根本的な原因がある場合は、外科的処置で広がった腸を切除する、狭くなった骨盤を広げるといった治療を行うこともあります。便秘になりやすいのは、10歳以上の高齢猫、水分摂取量が少ない猫、ドライフードを好まない猫、多頭飼いでストレスを抱えている猫、抗生物質を長期間服用している猫、去勢手術をして肥満になった猫、いつも寝てばかりいる猫などです。繊維質の多い食餌を与えることで改善する場合もあります。

肛門嚢炎・肛門周囲瘻

肛門の左右には、肛門嚢と呼ばれる袋があり、その中には悪臭のある物質が入っています。この肛門嚢が閉塞したり排出するカが弱くなったりすると、貯留物が溜まり、さらに細菌に感染して肛門嚢炎になります。肛門を舐める、肛門を咬む、肛門を床に擦りつける、自分の尾を追いかける、といったしぐさが見られるようになります。さらに悪化すると化膿し、肛門付近の皮膚が破れて出血してしまうことがあります。治療方法としては、肛門嚢を絞って貯留物を排出させたり、薬を投与したりすることから始めて、再発が多い場合には肛門嚢摘出の手術を実施することもあります。

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