神経疾患・泌尿器疾患

神経疾患

馬尾症候群

背骨は、正確には脊椎と言い、場所によって頸椎(首)・胸椎(胸)・腰椎(腰)・仙椎(お尻)と呼ばれています。脊椎の中には脊髄神経と呼ばれる神経の束が通っており、脊髄神経から末梢神経に変わる部分を馬尾と言います。そして、馬尾に障害が生じてしまうのが馬尾症候群で、椎間板ヘルニアや靭帯肥厚による圧迫、激しい運動で尾を引っ張られることによる神経外傷、腰椎と仙椎の間が狭い寄形などの原因が考えられます。症状としては、後ろ足がふらつく、お尻を触られるのを嫌がる、排尿や排便の時に痛がるといったことが挙げられます。馬尾への圧迫をなくすためには外科手術が必要ですが、鎮痛剤などの内科的な処置で済むことがほとんどですが、重度の圧迫がある場合には外科手術が適応となります。

前庭疾患

耳の中の一番奥の内耳には前庭と呼ばれる部位があり、卵形囊・球形嚢・半規管からできています。この中の卵形義と球形囊には炭酸カルシウムでできた耳石があり、これによって水平方向や重力の方向を感知しています。半規管(三半規管)はリンパ液で満たされた3つの管が直角に交わっており、頭の動きを捉えて脳に伝えています。これらの器官の異常が生じると、バランス感覚を失い、上手く姿勢を保てなくなってしまいます。これが前庭疾患で、その原因として最も多いのは内耳炎です。また、中年期や老齢期に突然起きることもあります。症状としては、よろめく、まっすぐ歩けない、首をかしげる、目が小刻みに動く、吐き気などがあります。内耳炎が原因であれば、抗生物質による治療を行います。老齢による突発性の場合、原因がはっきりしないことも多くステロイドなどによる消炎治療を行います。

脊髄梗塞

脊髄には非常に多くの神経細胞があり、脳からの信号を全身に伝える重要な役割を担っています。脊髄の中には血管も走っていますが、その血管が詰まってしまうと、脊髄への栄養が供給されなくなり、その脊髄の神経に関係している身体の部位が麻痺してしまいます。これが脊髄梗塞です。原因として最も一般的なのは線椎軟骨物質が血管内に詰まることですが、まれにその他の原因で起こることもあります。M・シュナウザーや柴犬の発症率が高く、激しい運動などの後に突然起こることが多い病気です。足に力が入らない、発熱、立てない、歩けないといった症状が見られます。治療方法は、ステロイドの使用や足のリハビリテーションで、早期であれば回復することがあります。

ホルネル症候群

ホルネル症候群は、顔面の動きや機能をコントロールしている交感神経が働かなくなる病気で、先天性異常、外傷、炎症、感染、新生物、中耳炎、内耳炎などの原因があります。瞬膜が出る、まぶたが下に垂れる、目が引っ込む、瞳孔が開かないといった症状があり、自然と回復することもあります。

水頭症

水頭症は、脳の中にある脳脊髄液の量が増加することで脳に圧力がかかり、様々な神経症状を引き起こす病気です。原因としては、遺伝、ビタミン欠乏症、外傷、感染症、脳炎、腫瘍などが考えられ、チワワ、ダックス、ヨークシャー・テリア、トイプードル、ボストンテリア、ペキニーズなどの小型種で発症しやすい傾向にあります。症状としては、眠り過ぎ、活動が低下する、痴呆、攻撃的な行動、筋硬直、痙攣発作、不全麻痺、知覚障害、意識障害、視力障害、眼球の揺れ、斜視とかなり幅広いのが特徴です。

てんかん

てんかんとは、脳細胞から過剰な電気が流れて身体に痙攣が発生する病気です。症状としては、意識がなくなるものから、身体の一部がピクピク動くまで幅広く、頻度や一回あたりの発作時間も様々です。発作が治まる前に次の発作が起きる重積発作は、最も危険な症状で、命を落とすこともあります。もしそういった症状が見られましたら、すぐに動物病院に連れて行きましょう。また、特発性てんかんと二次性てんかんに分けることができ、突発性てんかんは遺伝的な要素、二次性てんかんは外傷、脳腫瘍、脳炎、水頭症、尿毒症、低血糖などが原因だと考えられています。症状としては、不安、落ち着きがなくなる、流涎、嘔吐の前兆、突然足がピンと伸びる、横転する、後ろへのけぞる、足や口をガタガタ震わせる、手足の屈伸運動、泳ぐような運動をする、失禁、脱糞、口から泡を吹くなどがあり、通常は数十秒から2〜3分間で急激に元の状態に戻ったり、しばらく朦朧としてから少しずつ普通の状態に戻ったりします。

てんかん(治療方法)

てんかんは原因に合わせた治療を行うことが重要で、ほとんどの場合は、投薬を選択することになります。ただし、薬はてんかん発作の頻度を減らすのが目的で、100%発症しなくなるというわけではありません。一般的には、月に1回以上の発作があった場合、もしくは1日に何回か発作があった場合、発作が止まらない場合、発作頻度が増えている場合などに投薬治療を開始します。てんかんの薬は長期的に服用することが必要ですが、肝障害の副作用がある薬もあるため、定期的に血液検査をして薬の血中濃度や肝臓の酵素の値の測定をします。自己判断で薬をやめると、それまで抑えていた電気的ショートが一気に広がり興奮して死に至ることもありますので、ご注意ください。

てんかん発作の時に確認すべきこと
  • 何をしている時に発作が起きたか
  • 具体的な症状
  • 意識があるかないか
  • 発作はどのくらいの時間続いたか
  • どのくらいの頻度で発生しているか

※発作中は無意識に噛んでしまうことがありますので、むやみに触らないようにしましょう。

椎間板ヘルニア

犬や猫の胸椎の中には、脊椎があり、胸腰部でヘルニアが起きると脊髄を損傷することになります。

ハンセンⅠ型

ダックスフンドなどの軟骨異栄養性犬種は、弱くなった椎間板に負荷が加わり、破れた繊維輪から髄核が突出して、脊髄にダメージを受けます。若い頃に発症して急激に進行していくため、早期に治療を始めるようにしましょう。

ハンセンⅡ型

加齢によって椎間板が変形し、過形成を起こした繊維輪が脊髄を圧迫してしまうと、症状が慢性化します。

椎間板ヘルニアになった犬のうち、およそ10%は脊髄神経が軟化する進行性脊髄軟化症を併発することが分かっており、呼吸不全を引き起こして命に関わることもあります。

泌尿器疾患

膀胱炎

膀胱炎の原因は、尿道口からの細菌感染と腎臓からの細菌感染があります。メス犬はオス犬よりも尿道が短いため、膀胱に細菌が侵入しやすいことが分かっています。動物の身体は自己免疫力が備わっていますので、細菌が侵入してもすぐに感染するというわけではありませんが、飲水量が少ない、胱内に長時間尿が貯まっている、下痢、皮膚病といった様々な原因によって免疫力が低下していると、感染してしまうリスクが向上します。症状としては、頻尿、血尿、尿量の低下、排尿時に痛むなどがあり、さらに尿路結石症になると、尿の成分が結晶化するためチクチクと痛み、大きな結石が尿路に詰まってしまうこともあります。治療方法としては抗生物質と食事療法があり、特に尿路結石症になってしまった場合は、長期間に渡って食事管理が必要になります。

尿道閉塞

尿道が詰まって尿ができない病気を尿道閉塞と言います。単に排尿できないだけでなく、尿毒症を引き起こすこともあり、症状としては、吐き気、元気がなくなる、痙攣、昏睡といったものが挙げられます。緊急性を要する病気ですので、気になる症状があったらすぐに動物病院へ連れていきましょう。治療が間に合わないと、膀胱破裂になってしまうこともあります。尿道閉塞の原因は、結石が尿道に詰まることや尿道が炎症を起こして閉塞してしまうことなどが考えられます。治療方法は、カテーテルを尿道に挿入して詰まっているものを膀胱に戻したり、洗い流したりする処置を行います。また、その後、尿道を詰まりにくくする手術を行うこともあります。特に猫は水分の摂取量が少なく、濃縮された尿を産生するため、尿道閉塞になりやすい傾向があります。涼しい季節は水を飲む量が減り寝ている時間が長くなって排尿が少なくなることもあるため、できるだけ水分補給や排尿がしやすい環境を作りましょう。

尿石症

尿石症は、別名、尿路結石とも言い、腎臓、尿管、膀胱、尿道のどこかに結石が作られる病気です。石が詰まると尿路に炎症が起きたり、尿が通れなくなったりして、尿道閉塞になり、尿毒症、膀胱破裂といった病気を引き起こすこともあります。原因としては、細菌感染、ミネラルの多いエサ、飲水量の減少などで、シーズー、M・シュナウザー、W・コーギーなどが特に発症しやすい傾向にあります。症状としては、頻尿、血尿、尿の量が少ない、排尿する時に痛がるなどがあり、尿が全く出ない場合はすぐに処置をしなければ死に至ることもあります。オスはメスよりも尿道が長いため閉塞が置いやすく、重症状態にも発展しやすいため注意しましょう。治療方法は食事療法と薬で、体内のpH(酸性・アルカリ性)の値を整え、結石が溶けやすい状態を作ります。ただし、どのような食事療法を行うのかは、結石の種類や症状によって異なりますので動物病院の指示に従いましょう。

腎不全

腎臓は、血液中の老廃物や尿毒素を取り除く役割を果たしており、その機能が十分に働かなくなる病気が腎不全です。急性腎不全の場合は、尿を作ることができなくなり、尿の量が低下し、体内に尿毒素が溜まっていきます。そして、慢性腎不全では老廃物が血液中に残ったままになり、それを排除するために尿量が増え、喉も渇きやすくなります。原因としては、急性腎不全は腎臓に毒性のある薬物、腎臓の動脈の血栓、尿道の閉塞などが原因で、慢性腎不全は急性腎不全と同じ原因に加えて、泌尿器疾患の長期化から引き起こされることもあります。また症状は、急性腎不全の場合は、尿量の低下、吐き気、下痢、脱水症状などで、慢性腎不全の場合は、食欲不振、飲み水の増加、尿量の増加、吐き気、下痢、貧血、高血圧、痩せるなどがあります。治療方法としては、急性腎不全は輸液や利尿剤、慢性腎不全は活性炭製材や食餌療法などがあります。

ブン動物病院監修動物あんしん診療ナビ
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