皮膚の病気・筋骨格系疾患

皮膚の病気

猫の心因性皮膚炎

心因性皮膚炎は、痒いと思って皮膚を激しく舐める病気です。猫の舌はザラザラしているため皮膚に刺激を与えてしまい、どんどんダメージが大きくなって脱毛や皮膚炎に繋がっていってしまいます。原因は、皮膚の過敏状態、耳や肛門の感染、神経質な性格などの場合に起こります。発症しやすいのは、新しいペットが来た時、人間の赤ちゃんが生まれた時、猫の小屋が新しくなった時、同居していた他のペットや人間がいなくなった時などで、特にシャム猫やアビシニアン・キャットは発病しやすい傾向にあります。治療としては、舐めるのを止めさせるための薬を飲ませたり注射したりする、包帯やエリザベスカラーなどで舐めるのを阻止するといった方法があります。

猫の挫創(アクネ)

猫は身体を直接舐めてきれいにしますが、顎は直接舐めることができないので、前足を唾液で湿らしてこすります。しかし、これが上手くできない猫は、顎の表面に汚れが溜まって、正常な皮膚の分泌物と混ざり、面飽が形成されます。そして、面飽が感染を引き起こして膿包を作ったりただれたりしてしまうのです。炎症や細菌感染が見られない場合は、お湯で湿らせたタオルで拭く、イソジンなどの消毒液で汚れを拭き取る、動物用薬用シャンプーで洗うなどで改善することがありますが、強くこすると症状が悪化しますので注意しましょう。細菌感染がある場合は、抗生物質の投与も必要になります。

趾間膿胞(しかんのうほう)

趾間膿胞は指の間に最も多く見られる感染症で、皮膚の深いところが細菌に感染して、膿で満たされた水泡が作られます。犬自身が患部を舐めたり、咬んだりすると悪化しやすいため、注意が必要です。ダックスフンド、イングリッシュ・ブルドッグ、ラブラドール・レトリバーなどで発症することが多く、治療としては、エリザベスカラーで舐める行為を防ぎ、長期間の薬物投与をします。また、再発する可能性が高いため、外科的な処置によって治療をしてしまうのが安心です。

皮膚囊胞(ひふのうほう)

皮膚襄胞は皮膚に袋状の異常な構造物ができる病気で、犬によく見られます。原因は、皮膚を形成している細胞の配列が狂うことや、毛襄の欠損や閉鎖で、多くの場合、灰色から白みがかったチーズのようなものを含んで、時間が経つと大きくなっていき、炎症や感染を引き起こします。嚢胞は圧迫せずに、外科的に切除するようにしていきます。

肢端舐性皮膚炎(したんしせいひふえん)

肢端舐性皮膚炎は、舐め続けることによって起きる皮膚病です。同じところを舐め続けると、皮膚が厚くなり、やがて盛り上がって斑状病変ができてしまいます。ダックスフンドやイングリッシュ・ブルドッグの様な短毛種がこの病気にかかりやすく、家に新しいペットや赤ちゃんができた、家族の誰かがいなくなった、近くの雌が発情している、長い間放っておかれた、閉じ込められたなどのストレスも舐める行動の原因になります。治療方法は、まずエリザベスカラーを装着して舐めることをやめさせ、薬物療法で細菌の二次感染を予防します。また、場合によっては外科的な処置が必要なこともあります。

犬のアトピー

ほこり、ダニ、花粉などに敏感に反応し、アレルギー症状を引き起こして皮膚をしきりに舐めたり掻いたりすることがあります。特に日本犬、柴、シュナウザー、アイリッシュセッター、ボストンテリア、スコッチテリア、ウェスト・ハイランド・ホワイトテリア、ケアンテリア、ワイヤーヘアードテリアなどはアトピーになりやすく、およそ75%は春から秋にかけて発症します。痛みがあり、患部を噛む、引っ掻くなどを繰り返して皮膚の細菌感染を起こすこともあります。

ノミアレルギー

ノミアレルギーは、ノミの唾液成分に対する過剰反応で、1匹のノミに噛まれただけで重い症状が出ることもあります。そして患部を自分で噛んだり、舐めたり、引っかいたりすると病気は広がっていってしまいます。身体の表面に、1.5〜2ミリの褐色の素早く動きまわる虫、黒い粉のような糞、0.5ミリ程度の白い卵が見られる時はノミに寄生されているでしょう。アレルギー反応を抑える治療を行うと同時に、衛生管理を徹底するようにしましょう。

アレルギー性接触性皮膚炎

アレルギー性接触性皮膚炎は、寝ている時に地面に接している部分にアレルギー反応が起こる病気で、腹部、胸の下部、尾の下面、陰嚢、耳、顎、肢端の背面などでよく発生します。痒くなったところを、動物が自分で掻いたり咬んだりすると皮膚が損傷し、細菌に感染してしまうことがあります。また、顎と口だけが炎症を起こしている場合はプラスティックの食器やオモチャにアレルギー反応が起きている可能性が高いでしょう。治療方法としては、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤などを用います。

筋骨格系疾患

臍ヘルニア

臍ヘルニアはヘソの位置で腹腔内内容物が皮下に脱出する病気です。出生時に臍帯を切ると、このヘソの開口部は閉じられますが、稀に完全に閉じずに腹壁の開口部として残ってしまうことがあります。もしヘルニアが脱出した消化管を圧迫すると、血行が悪くなったり、腸で食物の通過ができなくなったりします。小さいヘルニアは脂肪しか脱出しないため治療の必要はありませんが、大きなヘルニアは腸管が締めつけられて血液が遮断され、吐き気、血便、便秘などを引き起こし、最悪の場合、死に至ることもあります。

変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)

関節にはクッションの役割を果たす軟骨が入っていますが、それがすり減ると関節に炎症が起きたり変形したりします。これが変形性関節症で、慢性的な痛み、足を引きずる、腫れる、熱を持つなどの症状が現れます。治療方法としては、減量をして関節への負担を減らすことや、非ステロイド性抗炎症薬などの投与がありますが、場合によっては外科的手術を行います。

膝蓋骨内方脱臼

膝には「お皿」と呼ばれている骨があり、これが膝のスムーズな曲げ伸ばしを助けています。しかし、この骨がズレてしまうと痛みが出て歩行障害が見られるようになります。膝蓋骨脱臼は全ての犬種で発生しますが、大腿骨の溝より内側にズレる内方脱臼は小型犬に、外側にはずれる外方脱臼は大型犬によく見られます。

鼠径ヘルニア

通常、内臓は腹壁に守られていますが、腹壁に穴があるとそこから内臓が飛び出してしまいます。これがヘルニアで、特に足の付根の鼠径部にある穴(隙間)から小腸や腸間膜が飛び出すことを鼠径ヘルニアといます。生まれつきの鼠径部の異常、老化、肥満、妊娠による腹圧の上昇など、様々な原因で発生します。手で簡単に押し戻すことができ、内容物が脂肪のみの場合は様子を見ることもありますが、内臓が入り込んで血流が悪くなると緊急に手術が必要になるため、早めに手術でヘルニア孔をふさいでおく方が安心です。

前十字靱帯断裂

膝には前十字靱帯と呼ばれる靭帯があり、断裂すると大腿骨が脛骨上を前後に滑るようになり、痛みが発生します。さらに摩擦によって関節炎が引き起こされることも珍しくありません。前十字靭帯断裂は、中年から老齢の肥満犬でよく見られ、運動制限や休養で回復することもあれば、手術が必要なこともあります。急激に強い負荷がかかって断裂すると、突然足を上げたままになり、激しい痛みを伴いますが、部分断裂や徐々に断裂が進行するケースでは、太ももの筋肉量が低下するまで気づきにくい事もあります。

骨軟骨症、離断性骨軟骨炎

骨軟骨症は、関節の軟骨部分の骨化が正常に進まないために生じる病気で、進行すると関節軟骨や関節が破壊され、離断性骨軟骨炎が発生します。また、軟骨の一部が剥がれ落ち、関節内を遊離することもあります。成長の早い大型種の若い犬が発症することが多く、特に肩、肘、飛節、膝の各関節で見られます。多くの場合は、休養や投薬だけで回復しますが、場合によっては軟骨片の外科的摘出が必要なケースもあります。

股関節形成不全

股関節形成不全は、股関節の形成に異常をきたして不安定な状態になる病気です。この病気に罹っている犬は、歳を取ると股関節の関節炎が発生して後ろ足を引きずるようになります。原因としては、先天性、環境要因、餌などが関係していると考えられています。軽度の場合は、ほとんど症状がありませんが、重症になるとよろめき、ふらつき、走る際に跳びはねる、立ち上がらない、階段を昇らない、などが見られるようになります。特に大型犬種(ゴールデンレトリーバー、ラブラドール、シェパード)で発生することが多い傾向にあります。

リウマチ性関節炎

リウマチ性関節炎は、自己免疫性疾患の一種で、免疫複合体が自分自身の関節の骨膜細胞を異物と認識し、排除しようとして炎症反応が起きます。症状としては、関節の痛みがあり、手首、足首、指の関節で病変が見られることが多く、異常な熱っぽさが発生することもあります。治療としては、非ステロイド系の抗炎症薬やステロイド系の抗炎症薬、そして免疫反応を抑えてリウマチの炎症をしずめる、抗リウマチ薬などを使用します。

会陰(えいん)ヘルニア

会陰部は、お尻の筋肉や太ももの筋肉に覆われていますが、高齢になって薄くなった筋肉の穴(隙間)から大腸などがはみ出してしまうことがあります。これが会陰ヘルニアで、中年以降の去勢していないオス犬に多く見られます。そしてはみ出した腸に便が溜まることがあり、便秘や排便障害が起こることもあります。治療方法としては、はみ出した腸を戻して、筋肉の隙間を塞ぐ手術を行います。さらに、再発予防のために去勢手術を実施しまが、筋肉が極度に薄い場合、再発する事もあります。

横隔膜ヘルニア

横隔膜は、胸部と腹部の間にある筋肉の膜ですが、ここに穴があると肝臓、胃、脾臓、小腸などが胸部に入り込んでしまいます。症状は、全くないこともありますが、酷いと呼吸困難や嘔吐を繰り返すため、外科手術が必要になります。

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