呼吸器疾患・循環器系疾患

呼吸器疾患

猫喘息

猫喘息は猫のアレルギー性呼吸器疾患の一つで、原因としては、ホコリ、ダニ、ハウスダスト、カビ、タバコ、芳香剤、お香などがあり、一度発症すると、再発を繰り返す傾向にあります。症状としては、背中を丸めとても苦しそうな呼吸をしたり、咳をしたり、舌などの粘膜が紫色になったりします。原因のアレルギー物質を見つけて取り除くのが一番ですが、症状を緩和させるために抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤を使用します。

肺炎

肺に空気を送り込む気道には、ホコリ、細菌、ウイルスが入り込みますが、粘膜組織にある綿毛によって押し戻されるようになっています。しかし、体力が低下して免疫力が落ちると、侵入物を上手く排除することができなくなり、粘膜に炎症が発生して咳や痰に繋がります。さらに重症になると、気管支の奥に症状が進んでいき、最終的には肺胞部まで広がります。これを肺炎と言い、ワクチン未接種の仔犬や仔猫、高齢の犬や猫に発生しやすい傾向にあります。食べたものや吐いたものが気管に入ってしまったことが原因で発生することもあり、これは誤嚥性肺炎と呼ばれています。肺炎になると、肩で息をする、鼻水、発熱、食欲低下、咳といった症状が見られ、体力が低下していきます。細菌感染が原因であれば抗生物質、ウイルスが原因であれば抗ウイルス剤、アレルギー性の肺炎であれば抗炎症剤などを投薬し、さらに咳が酷い時には吸入器を使用することもあります。自分で餌を食べることができないほど体力が低下している時は、動物病院で点滴を受けるようにしましょう。

軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)

軟口蓋は、口の奥にある組織で、通常は呼吸の邪魔をすることはありませんが、長くたるむと、喉の入り口を塞いでしまいます。これが軟口蓋過長症で、原因はほとんどが先天性です。パグ、ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、シーズー、ボクサー、ボストンテリアなどの短頭種と、キャバリア・キングチャールズスパニエル、ヨークシャー・テリア、チワワなどに発症することが多く、いびき、鼻を鳴らすような呼吸、口呼吸、上手く飲み込めない、飲み込む時にむせる、飲んだ水を吐くなどの症状もあります。重症例になると呼吸困難やチアノーゼを発症して失神してしまうこともあります。治療方法としては、なるべく若いうちに長くなった軟口蓋の外科的切除を行うことをお勧めします。

逆くしゃみ(リバース・スニード・シンドローム)

逆くしゃみとは、鼻から空気を急激に吸い込む発作性の呼吸の現象で1才以下の若い子の場合は、病気ではないことがほとんどです。原因は不明ですが、アレルギー、ウイルス感染、細菌感染、異物、軟口蓋過長症などが関係していると考えられています。逆くしゃみが出る時は、首を前方に伸ばして、目を開き、起立した状態で、鼻に何かついたものを振り払うように大きな鼻息音を出しながら急速に空気を吸い込み、数秒からおよそ1分間で治まります。プードル、パピヨン、チワワ、ヨーキーなどでよく見られます。舌を触ってつばを飲み込ませる、喉や胸をマッサージする、鼻の穴を閉じるなどをして対処してあげましょう。ただし、逆くしゃみではない別の呼吸器疾患の可能性もある上、老齢の子に症状が出てきたら、病気の可能性が高いので、念のため動物病院で受診することが大切です。

気管虚脱(きかんきょだつ)

気管は35~45個の軟骨輪からできており、筋肉と靭帯によってチューブ型になっています。気管虚脱は、その気管が押し潰されたように変形する病気で、咳、呼吸困難、紫色の舌になる、といった症状が見られます。特に中年から老年のチワワ、ポメラニアン、パグ、マルチーズ、ヨークシャー・テリア、トイプードルなどの小型犬種でよく発症します。治療方法としては、気管支拡張剤の投薬と外科的手術があります。特に肥満、よくほえる犬、リードを引っ張るといった犬は気管虚脱になりやすいため、気をつけましょう。

循環器系疾患

僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)

心臓の左側の、左心房と左心室の間にある弁を僧帽弁と言い、血液が左心室から全身へ流れる時に、逆流を防ぐ大事な役割を担っています。しかし、マルチーズ、シーズー、ポメラニアン、キャバリアなどの小型犬は歳を取ると、僧帽弁の組織がしっかり閉じなくなってしまうことがあります。初期症状はほとんどありませんが、進行すると息苦しい、元気がない、活動的でなくなる、ハーハーするなどの症状が見られるようになってきます、さらに悪化すると、肺に水が溜まって咳をするようになり、最終的には死に至ることもあります。この病気を完全に治す方法はなく、血管拡張剤で血管を広げたり、利尿薬で体内の水分を減らしたりすることで、心臓の負担を緩和します。また、激しい運動、興奮状態、肥満を避けることが重要です。

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心臓の構造と機能

心臓は、中で上下・左右の小さな部屋に分かれていて、それぞれ、右心房・右心室・左心房・左心室と呼ばれています。また、心房と心室の間には血液が逆流しないための弁がついていて、左の弁を僧帽弁、右の弁を三尖弁と言います。心臓はポンプとして血液を全身に流しており、その活動の証拠として心拍音がします。拡張期には、心室が拡張して血液が心室に中に入ってきて、収縮期には心室が収縮することで血液を送り出します。これが1セットの動きとなって、「ドックン」という心拍音になっているのです。

心臓の奇形

心室中隔欠損症
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心臓の左と右の部屋の間には、「心室中隔」という壁がありますが、そこに穴が開いてしまうことで、ポンプとしての力が弱まり、全身に送る血液の量が減ってしまいます。生まれつき持っていることがほとんどです。軽度であれば自然と穴が塞がることもありますが、穴が大きいと咳が出る、動かない、発育不良といった症状が見られ、さらに悪化すると血液循環が悪くなることで全身の酸素供給量が足りなくなり、チアノーゼや赤血球増加症になってしまうこともあります。

心房中隔欠損
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動脈管開存症

お腹の中にいる赤ちゃんは、肺呼吸をしないため、心臓に戻ってきた血液を肺に送らず、そのまま全身に送り返します。その時に使用される管が動脈管で、これが生まれた後も開いたままの状態になってしまっている病気が動脈管開存症です。動脈管が機能していると、大動脈から肺動脈に直接血液が流れ込み、肺や心臓に大きな負担がかかります。コリー、シェルティー、ミニチュアダックスフンド、ミニチュア・プードル、ポメラニアンといった犬種の特にメスでなりやすい傾向があります。症状がないこともありますが、咳、動かない、発育不良、チアノーゼ、赤血球増加症といった症状が見られることもあります。

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肺動脈狭窄症
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肺動脈狭窄症は、肺動脈弁の近くの管が通常より狭くなっていることで、上手く血液を送り出せない病気です。この病気になると、強い力で血液を送り出すことが必要になり、右心室の筋肉が大きくなります。小型犬種で発症することが多く、軽度の場合は命に別条はありませんが、重度の場合は呼吸困難、お腹が張る、動かないといった症状が見られ、場合によっては心不全で命を落とすこともあります。

大動脈狭窄症
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大動脈の近くの管が狭くなり、血液を上手く送り出せないのが大動脈狭窄症です。血液をしっかりと送り出すために左心室の筋肉が肥大し、呼吸困難、動かない、咳、心不全などが見られることもあります。特に大型犬種に多い病気です。

ファロー四徴症

4つの病気「心室中隔欠損症」「肺動脈狭窄症」「右心室肥大」「大動脈右方偏位(大動脈騎乗)」が併発している状態をファロー四徴症と呼びます。呼吸が粗い、チアノーゼ、赤血球増加症、失神などの症状が見られ、早期に命を落としてしまうリスクが高まります。

心タンポナーデ

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心臓は、肋骨に囲まれた胸腔内の中の袋に入っています。その袋と心臓の間には、水分が存在していますが、その水が大量に溜まって心臓の拡張を妨げることがあります。それが心タンポナーデで、腫瘍、外傷、ウイルス、細菌、右心不全といった原因が考えられます。この病気になると血液をしっかりと身体に送り出すことができなくなり、虚脱、心臓性ショック、無気力、衰弱、元気がない、食欲低下、腹部膨満、呼吸困難、虚脱、失神といった症状が現れます。針を刺して溜まった水を抜くのが最初の治療ですが、再発することもあり、利尿剤や止血剤を使って水が溜まりにくくする治療も並行して行います。また、心嚢膜切開を行うこともあります。

三尖弁閉鎖不全症(さんせんべんへいさふぜんしょう)

右心房と右心室の間には、三尖弁と呼ばれる弁があり、血流の逆流を防いでいます。その三尖弁が変形すると、心臓の収縮期に血液が逆流してしまい、十分な量の血液を身体に送り出せなくなってしまいます。これが三尖弁閉鎖不全症で、腹水や皮下浮腫といった症状が現れます。

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拡張型心筋症

拡張型心筋症は、心室の壁が薄いためポンプとしての役割を十分に果たせなくなってしまう病気です。原因は不明で、ジャーマン・シェパード、セントーバーナード・ドーベルマンなどの大型犬がなりやすい傾向にあります。僧帽弁閉鎖不全症や三尖弁閉鎖不全症を引き起こすなどして、うっ血性心不全が発生することもあります。治療は主に内科的な処置を行うことになります。

フィラリア症

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蚊が媒介する寄生虫が、肺動脈や心臓に寄生して起こるのがフィラリア症です。蚊に刺された時に感染し、フィラリアは動物の血管の中で成虫へと育ち、最終的には心臓に住み着きます。初期症状はほとんどありませんが、心臓の血管を詰まらせることもあり、元気がなくなる、食欲低下、咳、痩せる、呼吸が苦しそう、お腹が膨らむ、赤っぽい尿をするなどの症状が見られるようになります。初期治療は薬や注射ですが、外科処置でフィラリアを摘出することがあります。ただし、一度フィラリアに傷付けられた心臓や血管は元に戻りませんので、フィラリア摘出後も興奮して暴れるようなことがないよう気を付ける必要があります。フィラリア症は毎月フィラリア予防薬を飲ませることで防げますので、4~12月の期間はしっかりと予防策を講じるようにしましょう。

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